墓石の産地とその特徴

はじめに

外国産墓石材というと近年になって中国からの輸入が増え、まるで昭和期以前にはほとんど外国産とは縁が無かったかのような解釈をされている方が、一般の方のみに留まらず、業界関係者にもいらっしゃるようです。戦前、大正期にも建材、加工材として大理石などを良く輸入し、御影石に関しても、ヨーロッパ、ブラジルなどから、少ないながらも輸入を行っていました。昭和期にもこの流れは変わらず、アメリカ、朝鮮半島、台湾にも個性的な石材を探していました。今なぜ中国産なのかというと、誰でも「安いから」と察しがつくでしょう。しかし昭和期以前の輸入に対する取り組みは“個性的で良い原材を探していた”からに他なりません。むしろ珍しいプレミアム感のある石は、国産最高級墓石と比肩する地位にあったものです。
 現在の中国産墓石の安さの秘密は、「現地加工」にあります。決して材料が悪いわけではないのですが、歴史の浅い原材も多く、評価そのものが不安定になりがちです。「現地加工」の内容は重要です。国内の加工工場ならば、“その名に懸けて”大事な墓石を加工しますが、日本に於いて現地工場はブラックボックスのようなものです。現地生産工場の素性を明らかにできないような業者には依頼したくないものです。どんなに良い材料も加工、特に磨き加工がお粗末では粗悪品と変わりありません。

日本産
 各地で特徴のある石が採掘されており、古くから様々な需要に応える必要があったため、柔らかい砂岩から超硬質の花崗岩まで非常に幅が広いものです。あえて傾向があるとすれば、東洋風の石塔に向く優しい風合いを持った石が多い事です。価格的には中国産に押された事が、逆に作用したためか、大事に販売していく気運が高まり、高値安定といったところでしょうか。数十年から数百年にわたり使われているものばかりであり、品質の安定感では加工技術も含めて、最高といえます。 日本
中国産
近年の低価格帯の墓石はほぼ中国産が占めています。前述した通り、現地で安い労働力を駆使して加工を行っているからであり、品質とは直接関わりありません。今では中国以外の海外産墓石材も、多くは中国で加工されています。
但し、中国本土の墓石材は歴史が浅く、少し人気が上がると途端に当初の品質が維持できなくなるものが少なくありません。労働環境も劣悪なところが多く、事故が絶えないので、操業停止にされてしまう採掘所もあり、出荷状況も不安定にならざるを得ません。
 様々な色の個性的な原材が揃い、日本の石に良く似た墓石材も多いのが特徴で、日本風の名前が付けられています。「新」の付いた名前の墓石材はほとんど中国産と思われます。価格的にも選びやすいので、どうしても好みだけで選んでしまいがちですが、中国産の中でも長く使われている墓石材の中から選ぶのも良いでしょう。近年、労働環境の見直しが叫ばれ、「規制強化」が打ち出されています。また、日本特有の細かい工作に対する工賃の見直しも検討され始めていて、徐々に値上げの気運が高まってきています。
非常に器用な上に、日本製の工作機械を使用しているので、まじめに作られたものは、日本産と変わりがないほどですが、酷いものもかなり多いと言わざるを得ません。信用できる墓石会社選びから始めたいものです。代表石種 - 新山崎、白御影石各種、グレー系御影石各種
中国
インド産
中国産が台頭する以前から、かなり輸入を行っており、特に黒御影石は豊富で質の良いものが多いです。近頃では独特の石目の緑系御影石も人気で、良く建立されています。その他、赤御影石や青色系の白御影石など何れも高評価です。中国ほどではないですが、ラインナップが豊富でほとんどの需要に応えられるほどです。白御影石は非常に緻密で色が良いものが多いですが、石目が糠目である故、墓石建立後の変化も大きいことがあるので注意が必要です。今後の注目は、大理石に良く似たマルチカラー系の墓石材です。屋外の建立に弱い大理石と違い、非常に美しく強い上に、複雑な模様を持つので、少々の欠点や、経年変化は隠れてしまうのです。
代表石種 - クンナム黒御影石、ルビーレッド、インドグリーン
インド
韓国産
中国産以前の産地と言っても過言ではなく、今では細々と輸入されています。歴史は相当に古く、安心できる原材ばかりなので、今後の価格動向によっては、再び台頭する可能性を秘めています。白御影石の質が良いので、代表石種の栄州石などは、今でもかなりの人気があります。 韓国
南アフリカ産
代表石種のラステンバーグやブルーシルクなど結晶質で石目が大きく、透明感があるのが特徴です。美しい石目を生かして、高級内装材にも使用されるので、墓石材としてはやや派手に見える傾向が有ります。かつてはスーパーブラックと呼ばれた一級黒御影石が採掘されていましたが、現在は並品留まりで、敢えて選ぶ程では有りません。 南アフリカ
欧州産
かつては良く使われた、ポルトガルSPIやフランスのランフェリンなどが有名です。 北欧
北欧産
特徴ある原材が多く、スウェーデンの黒御影石(特にファイングレー)やフィンランド、ノルウェー何れも優れた石を産出します。 きたアメリカ
南米産
ブラジル、ウルグアイから輸入されていますが、未知の石も多いようです。ウルグアイのバイオレットブルーの評価が高いです。 南アフリカ
総括

“世界の工場”と言われる中国の台頭で、墓石の原材の勢力図も大きく塗り替えられました。中国産でなくとも、比較的使用量の多い原材は中国で加工されています。かつて高嶺の花であった石も今では選びやすくなって、選択の幅は広がっているのです。大切なのは石を見分ける前に、予算、お墓に対する心情、墓地の立地による気候条件、石材の現況などを総合的に勘案してご提案できる、良きアドバイザーを見分けることでしょう。